前を向いて、続ける理由を探す!  リオデジャネイロ五輪代表 衛藤昂(えとう たかし)さん

 

この記事はLiDSより管理人の許可を得て、引用しています。

選手村

リオデジャネイロ五輪代表 走り高飛びアスリートの衛藤昂(えとう たかし)さんに、これまでの競技生活や今後の目標などのお話を伺いました。衛藤さんは、鈴鹿高専筑波大学大学院を卒業後、AGF鈴鹿株式会社に入社し、日々業務に励みながら、競技生活を送られています。

初めてのオリンピック

緊張してしまいましたね。映像を見返すと、身体が硬くなっていたのが分かりました。結果は2m17(自己ベストは2m29)に終わり、決して満足はしていませんが、オリンピックを経験出来たことはとても良かったです。

経験してみないと分からないことばかりですから。地方の小さな大会でも、オリンピックのような大舞台でも競技する内容は同じなんですけどね。不思議な場所でした。

大舞台のプレッシャーと変化

オリンピック前は、選考基準(2m29)をクリアしないといけないプレッシャーが常にあったので、精神的な負担が大きかったです。前に進もうと一生懸命アクセルを踏んでいるのに、何故かブレーキがずっと掛かかっているような感覚でした。逆に今は、そこまでアクセルを踏まなくても、前に進めているような気がします。4年後に向け、トレーニングを思い切って出来ていることにより、良い変化が現れていると実感しています。

(オリンピアンになったからと言って)自分自身の気持ちに変わりはないですが、周りの方からの扱いは結構変わりましたね。ちょっと大袈裟じゃないですかね。(笑) イベントにもよく呼んでいただき、街の人からもだいぶ認知してもらえるようになりました。

ゴールを定めることで、目標が立てやすくなる

自己記録は、まだまだ伸ばせると思っています。最終的には、醍醐直幸選手の持つ日本記録(2m33)を越えて、一番になりたいという気持ちがあります。

走り高跳び選手のピークは20代中盤から後半くらいと言われています。自分が29歳になる年に東京五輪、翌年には国体が地元の三重県で開催されるので、今はそこをゴールに設定しています。自分の中でのゴールを定めていると、日々の目標が立てやすいですね。僕の場合、そうして競技を続けてこれたと思っています。

国体

海外での勝負が必要になる

(海外のコーチからの指導に関して) 海外の選手と体格が大きく異なるので、練習内容や伸ばす技術が変わってきます。日本人の指導者は日本人に合った指導をしてくれますから、僕には合っていると思っています。ただし、日本の試合に出場するだけでは、他の選手と競ることが少ないのも事実です。なので試合に関して言えば、もっと海外で戦う必要があると実感しています。海外では選手層が厚いので、無名の選手に負けてしまうことも良くあります。

(将来の夢は)いつかダイアモンドリーク*1には出場してみたいですね。

*1 アメリカ、ヨーロッパなど世界で開催される年間10試合程のツアー

ずっとスポーツに関わっていきたい

自分が将来、何を出来るのか未だ分からないですが、オリンピック選手として社会に貢献出来ればと考えています。普段、本をたくさん読むのですが、為末大さんの著書の影響を大きくうけていますね。色んなことにチャレンジして、引退後の自分に何かを残したいですね。

為末大さんや武井壮さんのように突出した求心力が有り、輝き続ける方々もいますが、引退する陸上選手の多くは表舞台から消えてしまうため、陸上アスリートのセカンドキャリアに対し、不安は少し有ります。将来の選択肢は多いほうが良いと思っていますが、どんな形でも良いので、スポーツにはずっと関わっていきたいですね。

アジア選手権

足のわらじ - 競技と日常業務

現在、AGF鈴鹿 総務グループに所属し、採用、インターンシップ受入れや、人材開発で資格取得のサポートを行っています。年間1万人以上を越える小学生の事業所見学の担当もしており、結構大変なこともありますが、16時まで通常業務をこなした後、練習という流れなので実は高専時代とあまり変わりないですよ。

走り高飛びという種目は、1日中練習することはなく、適度に筋肉や腱を休ませることが大切です。木曜日・日曜日の練習は休みで、会社のイベントに参加したり、ゆっくり休んでいます。

周囲への感謝

もう競技を辞めようと思ったことは何回もありますが、もうすこし手を伸ばせば、まだまだいけるという感覚がずっと有りました。僕は、エリート街道を進んだきた訳ではないですし、華々しい成績も残せていませんが、少しづつ実力を積み上げてこれたと思っています。エリートでもなく、大きな結果も残せなかったから、今日の自分があるのかもしれないですけどね。

社会人となってからは、少しだけ自分の力で戦えるようになった気もしますが、両親や周りの方の支えがあるからこそ、競技を続けてこれたと感謝しています。そして、高専時代ですが、教えてくれる先生方には本当に恵まれました。僕の唯一の自慢です。

文武両道を貫いた高専生時代

文武両道でやってこれたのは、「学業が出来ない理由に、陸上をやっているから」と言われたくなかったからだと思います。両方とも必死にやったことが、今に繋がっていますね。
勉強だけでは得られないものがあるし、部活だけでも得られないことがあると思います。部活に限らず、バンドだったり学祭もそうですけどね。2つでも3つでも、熱中してやるからこそ得られるものがきっとありますよ。高専在学時は気がつかなかったですけど、色んなことを経験するチャンスが多かったので、恵まれていたのだなと思います。

衛藤さん

学生さんに向けて

(今やっていることに対して) 簡単に辞める理由や言い訳を並べるのではなく、やる理由・続ける方法を前向きに考えて欲しいです。続けることにより得られる充実感は必ずありますから。それがどのように役立つか、自分も模索途中ですけどね(笑)
早く熱中出来ることを見つけて、良きライバルと競い、学生生活を謳歌して欲しいです。


編集後記

衛藤選手とは、筆者も高専専攻科時代に、同じ教室で勉強していました。いつも謙虚で勤勉な印象でしたが、オリンピック選手となった今も、高専時代から変わらない印象を受けました。

インタビューの途中、「一緒に写真を撮ってくれませんか?」と、目を輝かせた学生さんから声を掛けられるなど、周囲への影響力の大きさを感じました。高専はアスリートとして決して恵まれた環境では無いかもしれませんが、衛藤選手が残す軌跡は、オリンピックを目指す他の選手へ、きっと勇気を与えてくれるものと信じています。

執筆: 川野

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