自己紹介
名前:しろ
出身高専:苫小牧高専 機械系
学科順位:1年次 8/213,2年次 18/45,3年次 10/44,4年次 1/42
受験年:2026年度(2025年度実施)
受験大学(受験科目):東京農工大学工学部機械システム工学科航空宇宙・機械科学コース
併願大学:北海道大学工学部機械知能工学科機械システムコース(合格),室蘭工業大学創造工学科航空宇宙工学コース(合格)
部活や資格:陸上部,TOEIC 725点
TwitterID:@wtnr_622
学年ごとの勉強内容
1~3年
1~2年生のときは就職するか迷っており,進学は3年生になってから考え始めました.3年の夏休みに初めてTOEICを受けました.
4年後期までの話は北大体験談の方に詳しく載せてあります,
4年前期
学校の定期試験に力を入れていました.編入試験対策はTOEIC以外手をつけていませんでした.
4年後期
後期も席次を意識していましたが,編入数学の対策を始めました.加法定理すら覚えていなかったため,まずは高専の教科書の復習から行いました.教科書は必要そうなところだけかいつまんで1か月で終了しました.その後「編入数学徹底研究」に取り組み始めました.
この頃から勉強時間を記録するようになりました.平均勉強時間は9~11月が4時間/日,12月が6時間/日でした,
後期期末試験が終わり春休みに入りました.ようやく編入対策に集中できます.「理工系の電磁気学」という本を使って電磁気学の勉強を開始しました.学校では電磁気学の授業がなかったので独学で一からのスタートです.難しくて心折れそうでした.
数学では徹底研究の2周目に入りました.1周目と比べて大いに成長を実感できました.3月下旬以降,数学の過去問をひたすら解いていました.室工大の過去問を1周した後に農工大の過去問に取り組みました.
また,3月下旬からは「基礎物理学演習Ⅰ」を解き始めました.1ページ進むのに1時間以上かかり絶望していました.
1~3月の平均勉強時間は7時間/日でした.
5年前期
4月
農工大を受験することにしました.理由は,面白そうな研究室があり,研究室のHPを見てワクワクしたためです.あと,3月に受けた最後のTOEICで失敗してしまい,当日に英語の試験がある大学でリベンジしたかったので農工大受験に踏み込みました.
数学は過去問をだらだら解いていました.物理は参考書しかやっていません.
平均勉強時間は7時間/日です.
5月
数学の過去問に出てくる極値問題などはGeoGebraでグラフを作り答えを確認していました.物理は過去問に取り組み始めました.電磁気の応用問題が全く分からず,基礎問題しか解けない状態だったのでかなり焦っていました.理工系の電磁気学の2周目を全力で進めました.
面接対策を開始して,学校の先生に5回面接練習してもらいました.体験談を読み漁って想定質問リストを作るというオーソドックスなやり方で対策を行いました.農工大は面接が5分で終わるという情報があったので,短い時間でも最低限,志望動機だけはしっかり伝えられるように準備しました.
平均勉強時間は6時間/日です.
6月
ひたすら過去問を解き,最終的には数学と物理それぞれ16年分を1+0.2周しました.答えを持っていなかったため,参考書の類題やWolframで確認していました.
この頃の予想点数としては,数学9~10割,物理6割(力学9~10割,電磁気3割)でした.
試験2週間前に農工大の赤本を買い,英語の対策を始めました(遅すぎる).電磁気は半ば諦めていたので,英語で点数を稼ぐことにしました.赤本の英語は文章量が多く,毎回試験時間ギリギリで解ける程度でした.選択問題の正答率は8割ほどでしたが,英作文は低クオリティの文章で解答欄を埋めるといった感じです.ここでようやく英作文の難しさに気が付きました.もう手遅れですね.試験当日までに赤本は英語のみを1周しました.
農工大の試験日は北大推薦の3日後だったため,6月の勉強は農工大半分,北大半分で行っていました.試験科目が全く異なっており苦しかったです.このような試験日程は大変危険なのでよく考えて(あるいは覚悟を決めて)出願してください!
平均勉強時間は7時間/日です.
試験当日
試験内容
宿は大学の西側,武蔵小金井駅の近くに取りました.駅から降り見慣れぬ街並みの中を歩いている間は,この土地での生活を想像しました.(6月でこんなに暑いんですか,恐ろしい…)
試験前日は過去問を1年分だけ解いて早めに寝ました.
1日目は筆記試験です.土砂降りでしたが無事に試験会場に着きました.会場は厳かな雰囲気で,試験監督も気合入ってる感じでした.試験は数学,英語,物理の順で行われました.農工大の試験の特徴とともに当日の出来を書いていきます.
数学
傾向の変化は少なく,2変数関数の極値,重積分,線形代数(固有値・固有ベクトル),微分方程式が出題されます.試験時間は90分です.徹底研究で十分に対策できると思います.高得点争いになることが予想されるため,計算ミスのないよう鍛錬しましょう.
今年は例年通り極値,重積分,固有値・固有ベクトル,微分方程式が出題されました.ちょうど45分で解き終わったので解き直しを行いました.重積分の答えがきれいな値にならず不安になりましたが,解き直しても同じでした.それ以外は自信をもって答えることができました.予想点数は10割です.
英語
数学や物理と異なり,過去問が公開されておらず対策が難しいです.農工大の試験は問題用紙が回収されるため,体験談の情報を元に対策するしかありません.科学に関する単語を勉強しておくと良いらしいです.英作文が出る年もあるようです.試験時間は90分です.
実際に受けてみると予想していたより簡単でした.問題量は赤本と比べて圧倒的に少なく,30分で解き終わりました.英作文も出題されず,代わりに選択肢が与えられていない単語埋め問題が出ました.問題量が少なすぎてどこで差がつくのか不明です.予想点数は9割です.
物理
毎年力学と電磁気の2本立てで出題されます.私が入手した過去問(一番古いのが20年前)の中では力学と電磁気以外が出た年はありませんでした.力学は基礎的な問題が多いですが,たまに難問が出てきて痛い目に遭います.電磁気も基礎的な部分を問われますが,大学範囲を勉強していないと解けません.試験時間は75分と短いです.農工大は物理が合否を分けるのかなと思います.
今年の力学は2質点系のばね問題でした.微分方程式を2つ連立して解きます.誘導が丁寧だったので見た目ほど難しくはなかったです.ただ,力学の最後に記述問題が1問あり,どのような運動であるか説明する必要がありました.正直はっきりとした答えが思い浮かばず,答えの式から予想できることを書きました.あと,試験終了5分前に訂正が入りました.問題文に時刻の変数tが与えられていませんでした.
今年は電磁気の代わりに波動が出題されました.不意打ちをくらいました.完全に予想外でした.波の基本式に関する問題です.1, 2か月前に解いた基礎物理学演習の内容を思い出そうとしました.しかし,9問中2問しか答えることができず,残りは勘で埋めました.最大でも4問しか正解できていないと思います.試験後に募集要項を確認したところ,物理の出題範囲が「力学,熱力学,波動,電磁気学」となっていました.募集要項はよく読んでおくべきでした.というか北大の試験対策をもっと早く進めていれば波動にも対応できたはずです…
物理の予想点数は6割です.
全ての解答用紙に受験番号,志望学科,第1志望コースを書く必要があり,結構時間を取られます.私は過去問を解くたびにこれらを書く練習をしていました.
1日目,2日目ともにスーツを着ました.外を歩いているときは非常に暑かったです.
面接
2日目は面接です.朝は宿でトイレを詰まらせ,エレベーターに閉じ込められ,ようやく宿を出たところで初対面の外国人のおじさんに長話されそうになりましたが,なんとか会場にたどり着きました.エレベーターはシステムが閉じ込めを自動検知し,管理会社のオペレーターに繋いでくれました.無事に出られました.このシステムの迅速さに感心しました.
面接は家が遠い人から順に行われているようでした.待合室に学科全員が集められました.何人かはスーツケースを直接持ってきていました.私はスーツケースだと面接のとき不便だよなと思い,頑張って手提げ鞄に荷物を詰め込みましたがその必要はなかったようです.移動中は7kgくらいの鞄を持ち歩いていたので腕が悲鳴を上げていました(貧弱高専生).面接室は4つほどに分けられて同時進行で面接が行われました.ここからは面接内容を書いていきます.
面接室に入ると「荷物置いて座って」と言われました.お辞儀しようとしましたが,早く座るよう促されました.面接官は2人でした(左から面接官1, 2).
面接官1「受験番号と名前を教えてください.」
私「~~番,苫小牧高専の○○です.」
面接官1「志望理由を教えてください.」
私「~~~です.」
面接官1「第2志望のコースになっても入りますか?」
私「はい.」
面接官1「併願してるところを教えてください.」
私「(冒頭に記載の通り)」
面接官1「もう受けたんですか?結果は?」
私「4日前に受けて結果はこれからです.」
面接官1「いつわかるんですか?」
私「〇月〇日です.」
面接官1「農工大は第何志望?」
私「第2志望です.」
面接官2「そりゃそうだよね.」
面接官2「ちなみに,創造工学科だけど機械系なの?」
私「創造工学科の中の機械系です.」
面接官2「なるほどね.」
面接官1「大学院は行きますか?」
私「修士までは行く予定です.博士は修士経験してから考えます.」
面接官1「単位認定の数によってはストレートで卒業できないけど大丈夫そうですか?」
私「もう1年かかっても行きます.」
面接官2「まあ機械系なら大丈夫だと思うけどね.」
面接官1「これで終わりです.」
私「ありがとうございました.失礼します.」
順番は多少前後してるかもしれません.優しい面接でしたが,受験者数が多いので急いでいる感じでした.5分くらいで終わりました.面接官が学力試験の結果を知っているかは不明です.第2志望のコースになっても入るか,留年するかもしれないが大丈夫かといった質問は受験生の進学意欲を確認しているように感じました.過去の他の体験記を読んだところ,噓をついて農工大が第1志望であると答えた人がいましたが,そのようなことはせず正直に答えても問題ないと思います.
これにて試験終了です.結果は合格でした.人生で初めて合格した学力試験だったのでこの上なく嬉しかったです.2日間で3人の受験生と会話しましたが,意外にもそのうち2人が他大学からの受験生でした.
最後に,合格者数と志願者数を書いておきます.私の試験室は機械システム工学科と生体医用システム工学科の受験生だけが集まっていたので全体のことはわかりませんが,欠席者は目立つほど多くなかったです.
大学が公表している過去の入試情報には学科ごとの人数しか掲載されておらず,コースごとの人数は試験当日までわかりませんでした.機械システム工学科の2コースの合格者数にここまで差があるとは予想していませんでした.受験前に知りたかったです.
以下,(合格者数)/(志願者数)
工学部全体:48/162
生命工学科:2/8
生体医用システム工学科:5/12
応用化学科:4/11
化学工学コース:1/1
物理工学コース:5/8
航空宇宙・機械科学コース:4/27
ロボティクス・知能機械デザインコース:9/31
数理情報工学コース:9/34
電子情報工学コース:9/30
後輩に伝えたいこと
後輩に伝えたいこと
受験は選択の連続であると思います.合格した人の選択が最善とは限りませんし,最善を尽くした人が不合格になることもあるでしょう.出願状況や試験内容は毎年変動します.体験談を信じすぎず,自分はどう動けばいいのか考えてみてください.選抜試験においては他の受験生と比較されます.ライバルと差をつけるにはどうすればよいのか,ということを常に心に留めておいてほしいです.
そして,編入を目指したのなら,まずは徹底的に情報を集めてください.志望校選び,参考書選び,勉強計画,時間の使い方などで後悔のない選択ができるはずです.
オススメの参考書
数学
編入数学徹底研究(桜井基晴,金子書房,2020)
受験のために買った数学の参考書はこの一冊だけです.4年10月~5年8月の期間使い,2周半しました.広い範囲をカバーでき,最初から最後まで頼りになる万能型の参考書です.他の編入数学シリーズは学校の図書館にあったものを数ページ解いた程度です.
新基礎数学 改訂版(大日本図書,2020),新微分積分I(大日本図書,2021),新微分積分II(大日本図書,2022)
高専の教科書です.受験のスタートラインに立つために使いました.使用期間は4年9月~10月です.
英語
2025年度版 大学赤本シリーズ 東京農工大学(教学社,2024)
編入試験の英語は高校生向けの参考書を使っても特に問題はないと思います.むしろ,解答解説がしっかり書かれているという点では優れていると言えます.使用期間は5年6月です.1周しました.
物理
基礎物理学演習I(永田一清,サイエンス社,2021)
そこそこ難しくて時間はかかりますが解く価値はあると思います.ただ,いきなりこれに取り組むのではなく,他の易しい参考書で基礎力をつけてから使うことをおすすめします.受験は時間との戦いなので,これに時間を使いすぎるのも良くないです.使用期間は4年3月~5年8月です.0.8周しました.第1編の質点系と剛体の力学の部分は,学校の授業や試験ですでに学習していたので飛ばしました.
基礎と演習 理工系の電磁気学(高橋正雄,共立出版,2023)
ほとんど簡単な問題しか載っていません.ゼロから電磁気学を始めた私にとってはちょうどいい難易度でした.使用期間は4年2月~5年8月です.3周しました.
ファインマン物理学I 力学(R. P.ファインマン著,坪井忠二訳,岩波書店,2022)
参考書というよりは読み物です.初めて読んだときは感動しました.物理学の面白さに惹かれることでしょう.巻末の演習問題には手をつけませんでした.使用期間は4年12月~4年2月です.

