編入に役立つ

「転科」体験談 -機械工学から物理工学へ-

高専から名古屋大学工学部物理工学科(現在のエネルギー理工学科)に編入したH. M.というものです。

名古屋大学での生活が始まって4ヶ月が経ち,「最近だらけてきてるな」とひしひし思う今日この頃です。今回は,編入する際に転科しようと考えている高専生たちに向けて伝えたいことがあるので筆を執りました。

このブログでは

私が編入する際に転科しようと考えたいきさつ 編入試験の体験談 大学に入って思ったこと

を書こうと思います。

転科しようと考えたいきさつ

私は高専時代,機械工学科にいました。そもそも高専に入ったのはロボットに興味があったためで,物理の道などはまるで考えていませんでした。自分自身も機械に興味があり,授業も結構楽しく受けていました。しかし技術屋になって一生,機械畑で働く姿がどうしても想像できず,高専3年ごろまで進路についてかなり悩んでいました。

私の場合転機が訪れたのは,誰かにあこがれたとかえらい本を読んだとかそういう大層なことではなくただのPCゲームでした。核融合炉,というものを皆さんご存知でしょうか? 核融合とはその名の通り軽い原子核同士が衝突し,融合して新しい原子核をつくる核反応です (原発に使われるのは核分裂で,重い原子核が中性子の影響で2つないしは3つに分裂する核反応です)。核融合炉はその際に生じる質量欠損による莫大なエネルギーを利用するとてもクリーンな発電施設です。この核融合炉というものをあるPCゲームで知り,名前かっこいいなあと思っていろいろ調べ始めました。

調べれば調べるほど興味がわいていき,やがて自分が人生を賭してやりたいことはこれだ!と思うようになりました。高専3年次に核融合科学研究所というところにインターンシップに行かせていただき,そこで名古屋大学工学部物理工学科で核融合研究が盛んと聞いたわけです。

編入体験談

さぁ,そこに編入しようと心に決めたわけですが,「機械工学科から物理科に編入する」ということは「転科しなければならない」わけです。当然,高専の機械工学科にある編入資料にそんなものはなく,ほかの学科にもそんな資料はありませんでした。なので当日どのような試験があるのか全く分からず,専門試験の勉強は全くはかどりませんでした。なので,わけもわからず量子力学の勉強などしてました。

しかし,その量子力学の勉強のおかげでイメージが少しだけつかめて,それが入学してから大いに役立つことになりました.一見無駄だと思えてもやってみることに意義があると感じました。

さらに当時は核融合への興味はだれにも負けないという変な自負があったので「核融合炉工学概論」というもの(どちらかというと一般向けの解説書)をかい何度も読み込んだりしてました。ここで得た知識は本番でとても役に立ちましたし,今でも読んでおいてよかったなと思うときが良くあります。

結果的に,専門試験も問題を解くのではなく知識量を問うような試験だったので無事合格できました。

編入してから思ったこと

編入してやはり一番つらいことは,やはり勉強です。入って早々これでもかと量子力学の分野が出てきました。もちろんクラスの他の人は今まで少しずつ量子力学の勉強をしてましたから,十分に理解できています。なので先生の進行スピードも速く,板書を必死に取っていたらなにも理解できずに授業が終わってしまうことが多々ありました。

しかし,編入試験の際に少しでも量子力学に触れていたことが功を奏したのか,最近では少しずつ授業の内容が頭に入ってくるようになり授業で置いて行かれるということはなくなりました。

また,これは転科するに限ったことではないのですが,編入するということは途中から全く別の環境に放り込まれるということですから,初めはとても孤独に感じられるかもしれません(クラスに同じ編入仲間がいない場合さらに孤独です)。

しかし,私の場合あるサークルに同じクラスの子がいたのでそれをきっかけに友達を増やすことができました。

サークルに限った話ではなく,理系なら実験のグループで,文系なら研究室のメンバーで,いくらでも友達を作ることができる機会があります。あなたがその機会を逃さない限り,孤独を感じることはないはずです。

最後に

最後に,高専を出て文転するなり理系内で転科する人に伝えたいことを書いておきます。

転科すると今まで積み重ねてきた知識が無駄になる,と危惧する方もいると思います。しかし,今学んでいることは決して無駄になりません。私は編入してからこのことをひしひしと感じています。

むしろ,転科した先ではあなたがこれまで学んできたことは他の人がもっていないあなた自身の強みになります。

転科を決意した後も高専での専門科目の授業がいくつか残っているかと思います。しかし,決してもう使わないからと適当にやるのではなく,むしろもう復習できる機会はないのだと考えて今まで以上に真剣に勉強しましょう。その努力はのちのち必ず報われます。

なにより転科を決意したあなたは,他の人より良く自分の将来を考えて思い切った決断をしています。私もそうですが,お互いに年を取ってから自分のたどってきた道に間違いはなかったと思えるよう精いっぱい頑張っていきましょう

短い記事ですが最後まで読んでいただきありがとうございます。