編入体験談

2020年:北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科

自己紹介

名前:高齢者
出身高専:熊本高専人間情報システム工学科
学科順位:3年次:13位 4年次:2位
受験年:2019年
受験大学(受験科目):北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科メディアネットワークコース
併願大学:首都大学東京(現:東京都立大学) 豊橋技術科学大学
部活や資格:バスケ部、基本情報技術者試験、TOEIC560(高専4年時)
TwitterID:@az19763794

なぜ編入をしようと思ったか

北海道大学に自然言語処理の研究室があり、自分がいた高専では自然言語処理を研究する研究室がなかったためです。

自分は高い目標を達成するために努力を続けることが苦手な典型的な三日坊主であり、周りがやってるからやる的な環境に依存するタイプでした。なので、高い目標を持つ人が集まりそうな大学に行けば自ずと成長するんじゃないかと思ったのも動機の一つです。

学年ごとの勉強内容

1~3年

1から2年生までは、部活や寮生活を楽しむことでいっぱいで、将来、就活or編入とかはあまり考えていませんでした。ただ、なんとなく当時は高専卒で就職するより大卒で就職したほうが給料が良いという適当な理由で、ぼんやりと編入したいな~と思っていました。勉強はテスト前だけちゃんとやっていました。成績は1年から3年の間は40人中12~8位を行ったり来たりしていました。しかしこの時は定期テストのための勉強だったため正直身になっていないと思います。

3年生に入ると、就活or編入の進路を明確に決め始める人が増えてきました。僕は2年時同様、とりあえず編入や就活時に成績が足を引っ張らないように、定期テストは真面目に勉強していました。しかしながら、この時点でも〇〇がやりたいから〇〇大学へ行く!!のような正しく筋の通った目標はまだ持っていませんでした。

先輩から編入で推薦を狙うなら3,4年の成績は大事と聞いていたので、真面目に勉強はしたのですが、1,2年生時と打って変わって周りの同級生も推薦を取るためにちゃんと勉強し始めたのもあって、順位はそこまで伸びずに13位でした。

3年の冬あたりに初TOEICを受験し、460点でした。
また、このあたりの時期にZENPENを認知しました。

この時点での編入を意識した勉強はTOEICのみで、TOEICの公式問題集を1週程しました。zenpenを見てみると、同じ3年生でも数学や物理の専門書で勉強している方がいたり、3年時点の夏休みはずっと勉強していた人がいて、自分の不勉強さに若干焦りました。

4年前期

4年生春になると、いよいよ進路方針を先生に提出しなければいけないので、編入or就職の選択肢のうち編入を選んで提出しました。

夏になると編入についての体験談を読み漁りました。その中で「大学は自分が研究したい研究室があるかどうかで決めた」という記事を見て、自分もやりたい研究分野を決めて逆算的に大学を決めるべきだと気づきました。編入を志すひとにとってはこの観点は至極当然であるかのように思えるのですが、自分のようになあなあで目標を立てていた者にとってはその考えは助かるものでした。

大学の様々な研究室をネットで見ているなか、自然言語処理という分野が、人間にとっては理解が簡単な文章でも、計算機にとっては意味理解が難しく、様々なアプローチのもと研究されている点が面白そうだなとこのとき感じました。また自分は本が好きで、言葉がもたらす恩恵がコンピュータによってもっと多くの人に届けられたら良いなと思い、自然言語処理を研究している研究室を選ぶことにしました。

したがってこのとき学力で受験する大学は自然言語処理の研究室がある、電気通信大学、筑波大学、豊橋技術科学大学と決めました。このときはまだ北海道大学という選択肢は浮かんでいませんでした。

推薦については自分が三年時13位であったことと、何かの大会で大きな結果を出したこともなかったので、高いレベルの大学の推薦は無理っぽいなと思っていて、4年生の成績が出たら考えようと思っていました。

大学を大まかに決めたので4年の夏休みに入ったタイミングで編入の勉強に本腰を入れることにしました。

とりあえず、受験する大学の過去問を集めたり、倍率を調べました。数学、物理、TOEICの参考書を買い、夏休みで数学の基礎から勉強していました。最初はやる気があったのですが、数週間すると週4日に1,2時間程度できたら良いくらいの勉強ペースになってだらけていました。加えて、当時の自分は物理がかなり不得意であったため、物理の勉強にやるたびに、(このペースと理解度では筑波や電通大はもとい、試験で物理がある学校は無理なのでは)と考えるようになりました。

気づけば、夏休みは主に苦ではなかった数学とTOEICの勉強をし、片手間に物理の試験科目がない学校を探していました。

4年生の春に再度受けたTOEICでは520点でした。

4年後期

4年の9月頃に北海道大学にも自然言語処理の研究室があることを知りました。

試験について調べてみると、北海道大学の推薦試験は小論文と面接のみであり、北大に編入した先輩曰く、当時(2,3年前)は口頭試問が無く、情報エレクトロニクス学科の小論文の問題は毎年ほぼ同じ傾向であることがわかりました。

小論文の問題がほぼ同じ傾向であり、面接のみの試験ならば、差がつくのは席次だろうなと思い、このときから定期テストにも本気で取り組みました。(面接では大きなミスを犯さない限り、ほとんどの人は高い点数であることを聞いていたため)

そして、4年時の席次が良かったら北大の推薦試験を受けることを決めました。

物理試験のある筑波と電通大はあきらめて、物理試験のない首都大(現:東京都立大学)と豊橋に決めました。
したがって、4年の後期からは編入の勉強は数学とTOEICのみをやっていました。しかし、推薦の定期テストの勉強のほうを重点的にやっていたので、スキマ時間に金フレで単語を覚えたり、数学したりしていた感じでした。

定期テストに関しては、4年前期には無かった国語が後期から始まり、その点数が周りより異様に良かったので、結果的に席次は2位になりました。編入のために並行的にやっていた数学演習も、定期テストの数学で安定的に高い点数を取れるようになった要因のひとつだと思います。

TOEICに関してですが、4年の冬に受けたときは560点でした。
編入を受ける人は最低500点以上が望ましいという記事を見たので、この点数は編入生の中では割と低い方だと思います。正直やばいなと思いました。

5年前期

4年の席次が良かったので、北海道大学の推薦試験を受けることに決めました。

5年が始まる前の春休みは、一般で受験する首都大や豊橋の勉強をしていました。主に過去問を解いていました。

加えて、推薦試験のための小論文の練習をはじめました。
幸い、北海道大学の過去問は郵送などで取り寄せなくても、WEB上で3年分公開されているため、その三年分の小論文について本番のように書きました。

小論文の過去問を解いても、試験当日は全く違うテーマであれば意味がないと思うかもしれないですが、前述したとおり北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科の推薦小論文は数年間ほとんど同じ傾向であったため、今年も同じ傾向である可能性がとても高いと考えていました。実際、自分が受けた年も問われたテーマは過去問とほぼ同じでした。運が良かったです。

小論文対策

当時の過去問(平成29~31年度)の主な傾向は以下の通りです。
○大問が2つの構成。
○両者とも文字数は800字以内

○大問1:
(平成29,30年度)将来重要性が増すであろう情報エレクトロニクス分野の技術について1つ挙げて、その技術の概要、重要性が増すと考える理由、その将来の形について記述する。
or
(平成31年度)相乗効果が期待される技術を複数取り上げ、個々の技術の概要、それらの訴状効果によって実現され得る新たなサービスとその重要性について記述する
○大問2:
(平成29,30年度)情報エレクトロニクス学科に進学後の自分の将来像について以下の3項目を含んだ内容を記述する。
    (1)これまで学んだ内容と進学希望コースの関係
    (2)進学後に取り組みたいこと or 社会に出たあとに取り組みたいこと
    (3)大学で学んだことをどのような社会貢献に役立てるか
or
(平成31年度)編入学を希望するコースの学生として相応しい人物像に関する自身の見解と、その人物像に近づくためにどのような努力をしてきたか、また、今後どのような努力をするつもりであるかについて記述する。

3年分の小論文を春休みに書いたのちに、国語の先生、所属学科の先生2名の先生から添削指導をしていただきました。

国語の先生の添削では、内容が読み手に簡潔に伝わるように、論理の順番を入れ替えていただきました。加えて、自分は800字に収まりきれなかったため、冗長な文を先生がより的を射た言葉に変換されて800字に収めていただきました。

所属学科の先生からは、大問1に記述した技術の妥当性や高専でやってきた努力はどのような目的で、そしてこれからどのように役に立つかなど、本質的な内容の添削をされました。

こうして添削された小論文過去問(平成31年度分)の具体的な内容は、今年受験したテーマ(令和分)とほぼ同じであったため、【試験当日】にて詳細を書きます。
実質、平成31年度分の過去問で書いた内容を試験当日に書きました。
平成31年度分の小論文全文は僕に連絡していただければ送ります。

面接対策

面接の質問に関しては、北大に編入した他高専の先輩に事前に連絡をして、実際に質問された内容をおおまかに教えていただきました。

先輩から教えていただいた内容やネット上に乗っていた北大推薦の面接内容は以下の通りです。

○志望動機
○志望動機に思い至ったきっかけ
○大学院まで行く?マスター(修士)まで?ドクター(博士)まで?
○大学院まで行ける経済的余裕はある?
○なぜわざわざ北大?ほかの大学ではだめな理由とかある? 
○卒研の説明をして
○卒研に関するツッコミ 
○高専でがんばったこと  
○研究室見学した? 
○得意なことや科目、不得意な科目はある?

僕は小論文と同様に面接の練習も国語と先生と、学科内の先生3名にお願いして練習していただきました。
練習の際は上記の質問されそうなリストを渡して、自分なりの回答をしました。

面接に関しては、自分の場合、回数を重ねるほど落ち着きや態度が単調増加に改善していきました。いわゆる場慣れなのですが、4人目の先生と面接練習をしたときには自身の言いたいことが落ち着いて簡潔に伝えれるようになっていきました。学科内の先生のうち、面接官として威厳がある怖そうな雰囲気の先生にお願いしたこともあって、練習を終えたときには自然と自信がつきました。面接は計4名の先生にお世話になり、練習回数が多い印象があるかもれませんが、個人的に面接がめちゃくちゃ得意でない人に限り、場慣れのために最低3人の先生に見てもらったほうが良いと感じました。

研究室訪問

推薦試験を受けるからには、入りたい研究室の動向について深く知るために研究室訪問をするべきです。僕は研究室訪問を6月21日頃にしました。その日はたしか推薦試験の2日前でした。本来は4年の夏休みや4年が終わる春休みに行くべきでしたが、春休みの終盤で研究室訪問をふと考えたため、推薦試験のついでのような感じで研究室を訪問させていただきました。

僕はWEB上で見た研究室の雰囲気と実際の差異があまり無かったので良かったですが、自分と合ってない環境である場合には志望大学を変更できるように、やはり遅くても4年の夏休み頃に訪問するのが望ましいと考えます。

試験当日

試験内容(小論文)

2時間で大問が2つ、大問1つにつき800字以内の条件でした。

大問1

情報エレクトロニクス分野において、複数の技術の訴状効果により実現される技術やサービスについて以下の(1)~(3)をすべて含むように一つの文章のにまとめよ
(1)実現される技術やサービスの概要とその重要性
(2)組み合わせる個々の技術とその概要
(3)どのような相乗効果が期待されるのか

これは平成31年度の過去問の内容とほぼ同じであることがわかります。

僕は、相乗効果が期待される技術として「自動運転技術」と「5G」が挙げました。
自動運転技術は5Gにおける「超高速で大容量」「超多数端末接続」「超低遅延」の3つの特徴によって大きく進歩するだろうと考察しました。
相乗効果として、自動運転による事故が減ったり、渋滞緩和や足が不自由な高齢者の車利用のハードルが下がることなどを記述しました。

この大問1に自分が研究したい分野の最新技術について書いて、その研究を達成したいから北大に入りたいんだという旨を大問2に繋ぐのも個人的には良いなと思ったのですが、当時5Gについてメディアが活発に取り上げていて書きやすいなと思ったため、このテーマにしました。

大問2

情報エレクトロニクス学科に編入後の自分の将来像について以下の(1)~(3)のすべてを含むように一つの文章にまとめよ
(1)これまで学んできた内容と編入学希望コースとの関係
(2)大学で学びたい知識や技能
(3)大学で学ぶことをどのように社会貢献に役立てるか

これは平成29,30年度の過去問の内容とほぼ同じでした。

卒研で自然言語処理の入門的なことを学んでいたので、その内容と研究室の繋がりを(1)で書きました。(2)は言語処理における自然な雑談についての研究をしたいことを述べて、(3)ではそれをチャットボットなどに活用したいことを書きました。

面接

面接官はたしか3名ほどでした。自分が2日前に会った研究室の教授はいませんでした。
以下に実際に聞かれた質問と回答を簡潔に載せます。

○小論文どうだった?うまくかけた?
  →かけました
○志望動機教えて
  →荒木教授(言語処理)の研究室で研究したいからです
○卒研では何してる(意外とそんなに深く突っ込まれなかった)
  →歌詞のテキスト情報とWeb上の因果関係から歌の感情推定を行う研究をしています
○もし希望の卒研室入れなかったどうする?
  →言語処理と画像処理を組み合わせた研究室があったのでそこを挙げた
○学部卒業後はどうする?
  →大学院修士までを考えている
○就職したい企業とかある?
  →具体的な企業名までは考えていないけど、自分の研究分野が活かせる企業に就職したい
○高専で勉強以外で頑張ったこと教えて
  →ポスター・フライヤーのデザイン制作
○九州と比べて北海道は雪とか大変かもしれないよ。大丈夫?
  →北海道については事前に色々調べました。頑張ります(?)

面接は終始穏やかで安心しました。席が真ん中の先生が紙を持っていて、そこに書かれている質問事項を上から読んでいるように見えました。面接時間はおそらく5~8分とあっという間でした。

推薦試験は全体を通して、編入が北大でなければいけない理由、自分が目指す目標は北大でなければ達成できないということを明確に伝える必要がありました。
自分は行きたい研究室が持つ他と違うユニークな点を述べました。

僕が受験した情報エレクトロニクス学科メディアネットワークコースは、僕を含めて推薦受験者は3人でした。
このうち、僕ともうひとりの人が合格していました。

後輩に伝えたいこと

正直自分は推薦でなければほとんどの学校が受かっていないと思います。北大に合格できたのも、過去問と傾向通りであったこと、口頭試問がなかったこと、4年で席次がたまたま上がったことなど運の要素がまあまああります。

なので、こういう人もいるんだ程度で見ていただけたらと思います。

一応以下に経験としてやって正解だったことや、やるべきだったことを載せます。

①大学編入の情報はなるだけ早く集めよう

自分はできていないことなので大きな声で言えないのですが、やはり「行きたい研究室を決めて目標に見合った勉強をする」という準備は、なるだけ早いほうが良いと感じました。この準備が遅れてしまうと、時間的制約のせいで選べる選択肢の幅が狭まってしまうためです。実際僕は、もし研究室訪問で自分に合っていない環境であった場合「志望する大学を変える」ということは時間的にできなかったと思います。たまたま自分に合っていたので良かったのですが、そこについては運任せであったため、反省しています。

またZENPENさんのサイトに投稿された編入体験談を読んだり、ZENPENさんが開催している編入説明会に参加して先輩方のリアルな声を聞くことも重要だと思います。

②TOEICの勉強もなるだけ早めに

誰かがTOEICは回数をこなすほど点数が上がっていく、と言っていたのですが、体感的に半分合っていて半分間違っているような感じでした。というのも、はじめの500~550点突破までは、「TOEIC慣れ」※によって上がったのですが、そこからは真面目に自分の苦手な分野を地道に勉強して克服する必要がありました。

しかし、TOEIC慣れは早ければ有利であるため、この点でTOEICの受験は早めに行うことをおすすめします。
※TOEICの世界では殆どの場合パーティーでもアルコールは飲まずソフトドリンクのみであったり、「医師」が登場すると、アポや講演スケジュールの「予定変更」を伴うケースが多かったり、ある程度の「TOEIC世界あるある」が存在します。

③辛かったら周りを頼ろう

自分は周りの先生方や友達や親にかなり頼って合格したのですが、自分の実力だけではどうにもならないときには頼ることも大事だと考えます。頼った分、自分が返せることは必ず還元していく姿勢が重要だと思います。

オススメの参考書

学力試験のためにやった参考書

数学

  • 編入数学徹底研究: 頻出問題と過去問題の演習(著者:桜井 基晴)

TOEIC

  • 公式過去問3年分
  • 世界一わかりやすいTOEICテストの授業(Part1-4 リスニング)
  • 世界一わかりやすいTOEICテストの授業(Part7 読解)
  • 金フレ