自己紹介
名前:ひさお
出身高専:米子高専 物質工学科
学科順位:3年次:1 位 4年次:1位
受験年:2020
受験大学(受験科目):京都大学工学部 工業化学科:合格
試験科目:数学,物理,化学,英語
併願大学:名古屋大学工学部 化学生命工学科
部活や資格:野球部 TOEFL iBT 57(R 18 L 14 S 11 W 14) TOEIC 590
なぜ編入をしようと思ったか
研究職に就きたかったから.京都という場所に住みたかったから.
学年ごとの勉強内容
1~3年
野球部を引退するまで野球とトレーニングばかり行っていました.勉強はテスト前だけ本気で行っており,成績は1年:7位,2年:2位,3年:1位でした.しかしこの時は定期テストのための勉強だったため正直身になっていないと思います.
2年生の時にぼんやりと編入を意識し始めましたが勉強を始めることなく,本格的に勉強を始めたのは3年生の冬休みごろだったと思います.
初めは東京工業大学を目指していましたが,4年生に上がる前の春休みに京都旅行に行った際に京都に住みたいと思い,京都大学の受験を決めました.京都大学の英語はTOEFL iBTのスコアで評価されるため,英語弱者の僕にとっては非常にネックになると思いました.
受験を決めてからは基礎的なことから始めました.そんなに本気で勉強していたわけではなく,遊びの誘いが来れば遊んでいましたし,バイトもしていました.一日4時間勉強していればいいほうだったのではないでしょうか.このころに使用した教材としては
〈数学〉
◎大学編入のための数学問題集 (大日本図書)
◎線形代数 キャンパス・ゼミ (マセマ出版社)
〈物理〉
◎物理のエッセンス (河合塾)
〈英語〉
◎今井の英文法教室 (東進ブックス)
◎Next Stage (桐原書店)
◎東大英単語熟語 鉄壁 (KADOKAWA)
でした.数学で用いた教材は非常に解説が丁寧で高専で使用している教科書に沿っているのでわかりやすいですが問題が非常に難しいのでお勧めできません.やるとしてもA問題およびB問題のみで良いでしょう.先輩から譲り受けたマセマのキャンパスゼミの線形代数があったのでそれもやりました.
物理は物理のエッセンスで高校物理を一から詰め込みました.この本は結局何周もしましたし,受験直前もやることになるくらいいい本でした.
英語弱者の僕はまず,文法を勉強しました.非常に苦しかったですがTOEFLではWritingもSpeakingもあるのでこの文法の勉強は非常に役に立ちました.英単語は鉄壁で勉強しました.
化学は専門なので5年の春休みまでまったくやっていませんでした.
4年前期
一日3時間くらい勉強していました.高専祭の運営に携わっていたのであまり勉強時間を確保できませんでした.夏休みは一日6時間くらいの勉強でした.
〈数学〉
◎大学編入のための数学問題集
◎ラプラス変換 キャンパスゼミ
◎ベクトル解析 キャンパスゼミ
◎フーリエ変換 キャンパスゼミ
◎複素関数 キャンパスゼミ
〈物理〉
◎名門の森ー力学・熱・波動Ⅰ-
◎基礎物理学演習Ⅰ (サイエンス社)
〈英語〉
◎基礎英文解釈の技術100 (桐原書店)
◎英語「基礎英文解釈の技術100」 (KADOKAWA)
数学は引き続き大学編入のための数学問題集をやっていましたが難しすぎてただの苦行でした.僕の科では応用数学の範囲の進捗が遅いため,キャンパスゼミを使って応用数学を独学しました.京都大学の数学は応用数学が範囲外だったのですが,その他の旧帝大では出題されていたためそれに備えて勉強していました.
物理は物理のエッセンスが終わったことで完全に調子に乗っており,物理を理解したつもりになっていたためあまり勉強しませんでした.この判断で後々後悔することになります...やらないなりにも一応名門の森で力学の演習問題を行いサイエンス社の基礎物理学演習で大学物理の範囲を少し勉強していました.
英語は「基礎英文解釈の技術100」という短い文章を品詞に分解して和訳する訓練をする参考書でSVOCがわかるようになりました.これは非常に良い本でした.また,ポラリスを使って長文読解の訓練をしました.
4年後期
高専祭の運営があったため夏休み後の10月は全く勉強しませんでした.TOEFL受験はパスポートの発行が面倒で先延ばしにしていました.
高専祭が終わってからは一日6時間くらい勉強していました.使用した教材は以下です.
〈数学〉
◎編入数学徹底研究 (聖文新社)
◎細野真宏の確率が本当によくわかる本 (小学館)
〈物理〉
なにもやらず
〈英語〉
◎関正生の英語長文-ポラリスー 1 (KADOKAWA)
数学はそれまでに使用していた「大学編入のための数学問題集」が難しすぎたので編入数学徹底研究に移行しました.12月から確率の勉強を始めました.
物理は特に何もしていません.英語も完全にやる気を失い,英単語だけやっていた日もありました.TOEFLの対策は全くしていませんでした.
そして春休みに入る前にTOEFLを受験したのですが目も当てられない結果に終わり焦りを感じました.
5年前期
春休み
一日8~10時間ほど勉強しました.TOEFLの結果を京都大学に送付する必要があるのですがそれが2カ月ほどかかり,7月中には京都大学に着いていないといけないためTOEFLのラストチャンスは5月になることが分かったため春休みは英語の勉強を中心にやりました.使用した教材は以下です.
〈英語〉
◎TOEFLテストリスニング問題190 (旺文社)
◎TOEFLテストライティング問題100 (旺文社)
◎TOEFL TEST iBT スピーキング (トフルゼミナール)
◎Official Guide TOEFL TEST
〈数学〉
◎編入数学徹底研究 (聖文新社)
◎編入数学過去問特訓 (聖文新社)
〈物理〉
◎基礎物理学演習Ⅰ Ⅱ (サイエンス社)
〈化学〉
◎化学の新演習 (三省堂)
◎無機化学演習 大学院入試問題を中心に (東京化学同人)
◎有機化学演習 大学院入試問題を中心に (東京化学同人)
TOEFLの勉強法はネットに様々なものが載っているのでそれを参考にしました.TOEFLは書いたり話したりする技能を問われますが,読めて聞けるということが絶対条件なので頑張って勉強しました.春休み中は英語を主で勉強し,残りの教科はあまりやっていませんでした.
化学は併願した名古屋大学が高校化学が主であったため化学の新演習の勉強をしました.大学化学の範囲は大学院入試シリーズを使って勉強しましたが,はるかに編入の範囲を超えているため取捨選択して行うことが好ましいと思います.
物理は春休み中あまりしていませんでした.
数学は編入数学過去問特訓を始めました.自分の勉強のペースが遅いと思ったので大急ぎで過去問特訓をやりました.
コロナウイルス感染拡大の影響で春休みが伸び,TOEFL iBTが自宅受験になったため自宅でTOEFLを受けました.スコアは57で,自分が以前調べたときに英語の足切りが50弱だという情報が載っていたため安心しましたが,その年の英語の試験はTOEFLのスコアではなく当日に行うという情報が出たため英語のやる気がなくなりそこからはもう何もしていません.
7月
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんがこの時期にまだ京都大学の過去問を解いていませんでした.絶対に難しいから見たくないという理由です.併願校の名古屋大学の試験が7月末だったため名古屋大学の過去問に取り掛かりました.名古屋大学の問題はまあ解けるという印象でしたが一生懸命過去問を解きました.コロナウイルスの影響で筆記試験が中止になりオンラインの口頭試問のみでの評価になるという連絡が来るのはもう少し後の話です.勉強時間は1日7時間くらい.
8月
名古屋大学の試験が終わりここで初めて京都大学の過去問に取り掛かりました.化学はおおむね解けるのですが物理が全く分からないことにようやく気付きます.力学は好きであるため解けるのですが電磁気が全く解けませんでした.そこから学校の先生のもとを回って一通り解き終えましたが,学校にあった過去問をすべて解くことはできませんでした.
数学はベクトル空間や確率が毎年出ている印象だったため,復習しました.8月は受かる希望が見えないことから病んでしまい,あまり勉強に集中できませんでした.勉強時間は一日6時間くらい.
試験当日
試験内容
数学
- 微分方程式
あるウイルスに罹患している人数の微小変化を表す微分方程式の解を求め発展させていく問題.コロナウイルス感染拡大による社会への影響が大きかった年であったため,非常にタイムリーな問題でした.基本的な問題であったため完答. - 重積分
楕円の領域をの重積分を適切な変数変換をもちいて円領域にし,重積分を求める問題.重積分は問題集で勉強していましたが,例年出ていなかったためマークしていませんでした.完答しましたがあまり自信はないため半分くらいとれているのかなと思います. - 確率
これも大問1に続いてウイルス関連の問題.ウイルスに感染している確率を求める問題でした.これは基本的な問題で「細野真宏の確率が本当によくわかる本」をやっていてよかったと思いました.確率は例年,期待値や確率漸化式が出ている印象だったため,比較的易しい問題だったのかなと思います. - 固有値・固有ベクトル
未知数(aやbなど)が含まれる行列の固有値固有ベクトルに関する問題でした.始めはその行列のn乗を求める問題で,比較的易しかったです.この問題は固有値から固有ベクトルを求める問題で,やや応用の問題でしたが,固有値・固有ベクトルの定義をしっかりと抑えておけば解ける問題でした.時間が足りず最後までたどり着きませんでしたが,きちんと解けたと思います.
数学は初めに見たときに解ける問題がないと思いましたが,落ち着いて考えれば解ける問題でした.予想は7~8割ほどとれているのではないかと思います.
化学・物理
例年化学と物理の二つの科目は別々に試験を行いますが,今年度は英語の試験を当日に行うため,時間の都合上2科目を合計2時間で行うことになり,やや例年と違いました.
化学
- 熱力学
定積過程と断熱過程を組み合わせたサイクルに関する問題で最終的には熱効率を求めるところまでの問題でした.計算に時間がかかったため,最後までたどり着く前に切り上げました.
次はN2Oの共鳴構造についての問題で,その後ボルンハーバーサイクルを用いてNa2Cl2の結晶が存在しないことを示す問題でした.これは「化学の新演習」でも「無機化学演習」でもやっていたため完答できました. - 有機化学
ベンゼンの反応の問題が出ました.フリーデルクラフツ-アルキル化から酸化させ,安息香酸にした後,ニトロ化させ,アミンに還元する問題でした.これも基本的な問題だったため完答できました.「マクマリー有機化学概説」に乗っている反応だったため,解けました.
その後Sn2反応の反応性についての問題で,悩みましたが何とか答えました.
最後は有機合成から目的物を分離する問題だったのですがこの部分はあまり勉強していなかったため,まったくわからず白紙で出しました.
化学は僕の専門であるため40分くらいで終わらせる予定でしたが,思ったよりも時間がかかり,結局1時間かかりました.大体7割とれているかなという感想です.
物理
正直物理は全く分かりませんでした.例年力学は高校物理の範囲のエネルギー保存則を使って解く問題が出ていましたが今年は大学物理の力学が出ました.電磁気に関しては例年,マクスウェル方程式や電信方程式など大学の範囲の問題が出ていましたが,これも傾向が変わり,しかも難化した印象でした.
- 力学
レールの上に乗った質点に単振り子を付け,運動させる問題,つまり二体問題でした.二体問題についてはノーマークだったためまったくわかりませんでした.対策していても解けてなかったのではないかというくらい難しかったです. - 電磁気学
電磁誘導についての問題でしたが応用問題すぎて最初の2問しかわかりませんでした.後ろの方の問題を見ても全く分かりませんでした.
物理は2割くらいしか取れていないと思ったため,ここで不合格だと思いました.しかし周りの受験生もできていなかったのではないかと思います.知らんけど.
英語
英語はTOEFLの勉強を5月に終えてから一切勉強していませんでした.京都大学の赤本の英語を何問かやりましたが,難しかったため腹をくくってなにもしませんでした.試験が始まってみると,TOEFLに似た形式の問題でさほど難しくありませんでした.
- 人間の目に関する問題
英文を読んで4つの選択肢から正しいものを選んでいく問題でした. - コミュニケーションに関する問題
英文を読んでその後の要約が正しいか正しくないかあるいは述べられていないかを選択する問題でした. - 芸術作品の歴史に関する問題
英文を読んでそれぞれの段落の題名にするならどれかを選ぶ問題でした. - 英作文
2019と2020のアメリカと日本の人々の支出が何に使われているかを比較する問題でした.英作文はTOEFLのWritingで訓練していたためできました.
感想としては7割ほどとれているのではないかという感じでした.前の時間の物理を引きずって何度か諦めようとしましたが,高専に入るときの入試でも国語のマークシートの解答欄を間違えて100点満点中24点を叩き出し,その後の数学と社会もショックでともに50点という経験があったため,諦めないように自分を奮い立たせました.
面接
口頭試問と記載されていたため,対策のしようがなく卒業研究の内容だけ準備して臨みました.落ちていると思っていたため,吹っ切れて自然体で臨みました.
実際に部屋に入ると面接官が8人座っていました.非常に和やかなムードで雑談をしました.
専門的なことは一切聞かれず,試験の出来について聞かれたり,自己PRを聞かれたりしました.志望動機は最後のほうに聞かれ,自分が志望した理由を率直に伝えました.
20分ほどで面接は終わりました.試験が終わってキャンパス内を歩いていると受験が終わった安心感や達成感から自然と涙があふれていました.はたから見ると変な奴だったことでしょう.今考えると恥ずかしいです.
後輩に伝えたいこと
僕はわからないことをわからないといえないタイプでわからないことは自分で調べて解決する人間でした.振り返ってみるとこのせいで非常に効率を悪くしていたなと反省しています.わからないことはわかるヤツに聞いてください.
編入試験は孤独との闘いでした.同じクラスや同じ学年,他高専でもいいので励ましあえる仲間と一緒に勉強を進めていってください.一生懸命勉強した時間は必ずあなたの役に立つ時が来ると思います.僕自身受験勉強を終えて身についた知識が非常に役に立っています.僕は初め,物理,数学が大嫌いでしたが,編入試験で向き合った結果,好き!とまではいきませんがちょっと気になるヤツみたいなポジションになりました.英語もそうです.英語弱者でしたが,受験勉強を始める前と後では英語力が格段に違うと感じています.
そして,最後まであきらめないでください.あきらめなければ結果はついてくると思います.精神論・根性論は好きではありませんが,諦めなければ大丈夫です.何とかなります.頑張ってください.
最後に
志望する大学の過去問は早めにやりましょう.死ぬかと思いました.
オススメの参考書
上にも書きましたが,感想と一緒にもう一度書いておきます.
数学
◎大学編入のための数学問題集 (大日本図書)
◎キャンパス・ゼミシリーズ (マセマ出版社)
◎編入数学徹底研究 (聖文新社)
◎編入数学過去問特訓 (聖文新社)
◎細野真宏の確率が本当によくわかる本 (小学館)
取り掛かる順番としては,大学編入のための数学問題集のA問を授業の復習として使ってから編入数学徹底研究→過去問特訓という流れが良いと思います.最悪大学編入のための数学問題集はなくても大丈夫だと思います.確率は確率が本当によくわかる本で大丈夫でした.徹底研究や過去問特訓の確率はやりませんでした.
ベクトル空間の分野は非常にわかりにくい抽象的な分野であるため,キャンパス・ゼミの線形代数は役に立ちました.
物理
◎物理のエッセンス (河合塾)
◎基礎物理学演習Ⅰ Ⅱ (サイエンス社)
物理に関しては物理のエッセンスから取り掛かれば大丈夫だと思います.しかし,僕自身,分かったつもりになっており当日の試験はできなかったため,もっと大学物理の勉強を頑張ればよかったと思いました.
高校物理と大学物理の大きな差はベクトルの概念の有無と微分積分を使うかどうかだと思います.数学,特に微分積分を定義から勉強しておいてください.
化学
◎化学の新演習 (三省堂)
◎無機化学演習 大学院入試問題を中心に (東京化学同人)
◎有機化学演習 大学院入試問題を中心に (東京化学同人)
自分の専門は化学なので比較的苦労はしませんでしたが,高校化学の勉強は化学の新演習でおこないました.良い本でしたが,必要ないこともたくさん載っているので問題は選んでください.
大学院入試シリーズも編入の範囲を超えている問題がたくさんあるので取捨選択して頑張ってください.僕は強がってすべてやって時間を浪費しました.
化学の教科書は有機化学であれば「マクマリー」物理化学は「アトキンス」,無機化学は「シュライバー・アトキンス」を使いました.これら以外にもいろいろな専門書を使いましたがここでは割愛します.
英語
◎TOEFLテストリスニング問題190 (旺文社)
◎TOEFLテストライティング問題100 (旺文社)
◎TOEFL TEST iBT スピーキング (トフルゼミナール)
◎Official Guide TOEFL TEST
◎基礎英文解釈の技術100 (桐原書店)
◎英語「基礎英文解釈の技術100」 (KADOKAWA)
◎今井の英文法教室 (東進ブックス)
◎Next Stage (桐原書店)
◎東大英単語熟語 鉄壁 (KADOKAWA)
◎TOEFLテスト英単語3800 (旺文社)
一番初めに文法から取り掛かったのは正解だったと思います.その後の「基礎英文解釈の技術100」も非常に良い本で,SVOCをとれるようになりました.TOEFLはSpeakingでもWritingのセッションでも読む力,聞く力が試されるので能力をまんべんなく伸ばしていってください.気分転換に英語の映画を見たりしました.